転職や就職の時に見るべき決算書とは?
転職や就職の決断の際に、次の会社の懐事情を知っておくのは重要です。
誰でも知っているような会社でも、突然に大赤字決算を発表し、その後リストラを行うといったニュースをよく耳にすると思います。
転職・就職直後に、自分の会社がリストラ発表をしたら最悪ですよね?
実際に社内の雰囲気も殺伐としてくるでしょう。
それを避けるためには、財務的に安定した会社でかつ、自らのスキルアップが可能な会社が良い会社であると考えます。
ここでは、財務的に安定した会社を見分けるコツを説明します。
給料が上がりそうな会社か?
転職の動機として、年収を上げたいからというのは上位にきます。
現在の年収と比較して、転職先の企業が良いオファーをしてきた場合でも、その後年収が上がっていくか?というのは、入社しないとわからないこともあると思います。
そこで決算書を見ましょうという話です。
社員数と利益
シンプルに考えてほしいのですが、社員数が100人の会社があって、利益が1億円の会社があったとします。
このような会社は、社員の年収を平均100万円上げてしまうと利益が出なくなります。
もし、会社四季報などに書かれている年収よりも良いオファーをあなたが受け取っていたとしても、このような転職先では、さらに年収を上げていくのは難しいでしょう。
転職先の担当者はすでに相当頑張っています。
売上と利益
上の例の会社の売上が100億円だったとします。誰でも理解できるように、スーパーマーケットの会社だったとします。
売上が100億円で利益が1億円なので、売り上げの1%が利益となることがわかります。
この状態は、100円の商品を99円にして販売したら赤字になる?ということと同じです。
相当シビアな経営になるということです。
以上の話を単純にまとめると、
- 利益÷売り上げ が高い方が良い。
- 利益÷社員数 が高い方が良い。
ということになります。
安全とされる会社とは?
無借金経営をアピールしている会社は、自社の安定性をアピールしています。
借金をしている=悪い、というわけではありません。借金をして、攻めの投資もあり得ます。
安全性の指標とされる自己資本比率とは?
無借金経営の会社は、財務的には自己資本比率がすごく高い会社となります。
80%以上の値になっているはずです。
100%にならない理由は、個人の話で例えるとクレジットカードの支払など、遅れてやってくるものがあり、借りているのと等価なためです。
この自己資本比率を計算する根拠として、決算書に「貸借対照表」が載っています。以下に単純な貸借対照表の図を示します。
図のように、資産、負債、純資産と3つに分かれていることがわかります。自己資本比率とは、資産に対する純資産の比率です。
無借金であれば、負債の比率が低く、純資産の比率が高くなります。借金が多ければ、負債の比率が高く、純資産の比率が低くなります。
ポイントとして 資産=負債+純資産であることです。
例えば、工場を作るのに全額借金をしました。とすると、資産に工場の費用が計上され、負債に同額の費用が計上されます。
耐久力のある会社とは?
それはズバリ、現金を多く持っている会社です。
現金は、貸借対照表の資産の「現金及び預金」でチェックできます。
現金÷社員数、で会社を比較しても面白いと思います。
現金を多く持っていれば、会社間の支払いや給料の支払いが滞ることはありません。
現金が少ないと最悪の場合、黒字倒産の危険性もあります。
以下に現金を多く持っている会社のパターンを挙げておきます。
- 利益率の高いビジネスを行っていて、現金が積みあがっている
- 上場直後などで、投資家から資金を得た
- 借入を積極的に行っており、手元資金を充実させている
お金が必要で借りたいと思った時には貸してくれません。なぜなら、すでに危ない会社になっているからです。
したがって、借り入れを積極的に行えるのは良い会社でしょう。
なぜ大赤字になるのか?
ある会社が赤字5000億円などのニュースが流れても、キャッシュでいきなり5000億円なくなるわけではありません。
どうなっているのでしょう?
パターン1
工場を作るのに全額借金をした例を出しましたが、これは儲かると思って工場を作ったわけです。しかし、実際に儲かりませんでした。となると、工場の価値が下がってしまうので、減損といった損失になるわけです。
工場が無くなったりするわけではなく、価値だけが下がるのがポイントです。
以下の図を見てください。
負債はそのまま残っているので、自己資本比率が悪化していることがわかります。
こうなると、経営者は利益を増やして自己資本比率を回復させようとするので、結局ボーナスカットやリストラとなるケースが想定されます。
工場などに大規模投資した後の会社に転職を検討されている場合は、投資の結果が出ているかどうかのチェックが重要です。
パナソニックのプラズマテレビ事業などは参考になると思います。
パターン2
経営者が、会社を成長させるため、別の会社を買収したとします。
多くの場合、プレミアムと言って会社の実際の価値より高く買うことになり、貸借対照表に「のれん」という項目で資産に計上されます。
「のれん」はノウハウやブランド力など見えない価値に相当します。
先の工場の話と同じですが、買収した会社が思ったように利益を出さない場合、やはり減損といった損失になるわけです。
もし「のれん」が純資産より多い会社の場合、「のれん」が100%損失となった場合、債務超過になります。こうなると、やはり経営者は利益を増やして自己資本比率を回復させようとするので、ボーナスカットやリストラが想定されます。
このような会社に転職を検討されている場合は、買収した会社の事業もチェックしておくことが非常に重要です。
買収した事業がうまくいっていたとしても、かなり背伸びをした経営であると想像できます。
まとめ
長くなりましたので、ポイントをまとめておきます。
- 利益÷売り上げ が高い方が良い。
- 利益÷社員数 が高い方が良い。
- 現金を多く持っている。
- 大規模投資の結果が出ている。
- 「のれん」が純資産に比べて小さい。
以上すべてを満たすケースは少ないかもしれませんが、良い就職・転職の参考になれば幸いです。